大規模なデータを処理することができるHPC。気象予測など自然科学分野において広く使用されてきましたが、最近では自動車業界にとっても欠かせないものとなっています。自動車の開発や製造、とりわけ自動操縦型自動車の開発、製造において必要不可欠なものであるからです。
自動車の開発にはCAE（computer-aided engineering）を用います。CAEは開発中の車の耐久検証や衝突シミュレーションなどを行うことができる、非常に優れたシミュレーションシステムです。実際の試作車を用いて衝突実験を繰り返すより効率よくテストが行えますが、円滑に、かつ誤差なく正確に作動させるには、膨大なデータを高速で処理できる設備が必要となります。それを叶えるのがHPC機器です。いくら優れた技術者がCAEを活用しようとしても、処理能力に優れたサーバー、ハードがなければ実用化にはつながりません。
自動車業界におけるHPC導入の2大メリット
自動車業界においてHPCを導入することには、大きく2つのメリットがあるとされています。それぞれのメリットについて、具体的に解説していきます。
①開発・製造コストの削減
上記でも触れましたが、HPCを用いてCAE運用しシミュレーションを行うことにより、実際の試作車を用いたテストを行う必要性がなくなります。実際の試作車を用いて走行テストや衝突テストを行う場合、検証、改善を繰り返すため、複数台の試作車が必要となります。この試作車の製造コストだけでもかなり大きなものです。HPCを用いればそれがモニター上でできるので、企業にとって大幅なコスト削減が可能となります。
②研究開発における生産性の向上
CAEでの検証やシミュレーション自体は以前から行われていましたが、HPCの導入により、さらに迅速かつ円滑な研究開発が可能となりました。自動車の研究開発の際は、膨大な量の検証データやシミュレーションデータを処理しなければなりません。高度なデータ処理能力を持つHPCを用いることにより、それらのデータ処理にかかっていた時間が大幅に短縮でき、また次のプロセスへの移行もスムーズに行えるようになるためです。
HPC導入でメリットがあるのは自動車メーカーだけではない
HPC導入により、企業は試作車と凡庸な処理システムを用いて自動車の開発や製造を主なっていた時代より、低コストでかつスピーディーに製品の開発から流通までを叶えることができるようになりました。その結果、性能の優れた自動車を従来より低価格で販売できるようになり、消費者にとってもメリットがあります。また、開発から製造プロセスに乗るまでがスムーズであるため新しい技術を取り入れた自動車の製造もしやすくなり、自動車産業の活性化にもつながります。
自動車に関わる業界以外でも、HPCの導入を進めている企業は多くあります。またそのような企業のHPC導入や運用をサポートする会社もあります。自然科学分野や自動車開発分野のみにとどまらず、広い分野において今後HPCの導入は積極的に検討していくべきだと言えるでしょう。